《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「パパ、いっぱいちがでてる! はやくおけがなおさないと…」

「大丈夫だよ。……それよりもスズ…。いや、とりあえず今は少しでも早くここから離れよう…!」

「うん、、でもあのおじさんは?」

 勢いが衰えるどころか更に増してゆく炎を見つめる。スズランの問いにアスセナスは俯いて首を振った。

「分からない。助けようにもこの炎を消す力がもう残っていない。いや…、でもどうやら逃げ延びたみたいだ……奴はきっとまた狙って来る」

「じゃあ、またパパをいじめにくるの?」

「ああ、必ず…」

 また来る。
 そう聞いてスズランはアスセナスにしがみついた。震える手に力を込め、決意のこもった煌めく瞳で真っ直ぐ伝える。

「じゃあスゥ。パパのことまもる…!」

「スズ?!」

「とってもこわいし、まだママみたいにじょうずにできないけど、スゥもがんばるから!」

「……っ」

 まだ言葉が辿々しく幼いスズランに、そんな決意をさせてしまった。
 アスセナスの瞳から透明な雫がこぼれ落ちる。それは次々と溢れ出して止まりそうにない。

「パパ? どうしたの? なかないで…」

「……いいんだ。頑張らなくても、パパはスズが無事ならそれでいいんだから──」


 それから父子は駆り立てられる様にひたすら移動を重ねた。