《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「本当に十六なのかぁ？　その割に中身はお子さまだもんなぁ」

　不安は一気に消し飛んだものの、尽(ことごと)く意地悪なセィシェルの物言いにムキになって言い返す。

「むぅぅ！　マスター、セィシェルったらまた！！」

「これ、セィシェル！　そうやってスズのことをからかうんじゃあない」

「からかってねぇし事実だって。すぐそうやって膨れるしな！　だいたい親父がスズを甘やかすからだろ？　見た目はそこそこかも知れねぇけど中身がこんなじゃあな」

「もうお子さまじゃないもん！　早く大人になって何でも一人で出来る様になるんだからっ！」

「何でも一人で？　無理無理、何でもなんてスズには十年かかっても無理だろ……だからそんな無駄に背伸びしなくたっていいんだぜ？　ま、出来なくたって俺が…」

「ひどい！　無駄じゃないもん。すっごくがんばって早く大人になれば二人に恩返し出来ると思って…っ」

　この様にセィシェルと言い合いになる事は日常茶飯事だが、今回は流石に込み上げてくる悲しい感情に負けて涙が出そうになった。

「セィシェル……今のはお前の言い過ぎだ。スズに謝りなさい」

「は？　何で…」

「セィシェル」

　ユージーンの声音が低くなる。