《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「ジュリアンさんお願い! 早く…っ…早くライアの所に…」

「え……何? まさかアーサの奴…」

「ライアが…っ黒い裂け目の中に…っ」

 スズランの言葉にジュリアンは一瞬表情を固くした。だが直ぐに口元を緩めると軽い口調で説明しだす。

「まじかー!! いやぁさ、俺らで捉えた旧市街の奴らも護送の途中に突然出来た黒い隙間? みたいなのに吸い込まれて消えたんだよ! て事はまた一から作戦練り直さないとだな~。まいったな……ああ、でも良かった。アーサの奴、ちゃんとスズランちゃんの事守れたんだな」

「え…?」

 口調とは裏腹に真面目な声で何かを悟ったかの様に瞳を閉じた。

「心配しないでスズランちゃん。あいつなら絶対大丈夫だから! 後の事は俺たちにまかせてよ。あ、でも時間が惜しいな。ねえ、そっちのお兄さん。もし良かったらなんだけどさ……」

 丁度、八百屋の店主が呼んできてくれた警備隊員たちが到着し、更に騒ぎを聞きつけた人々が集まって来る。表通りに面する酒場(バル)の前はものの数分で騒然となった。


 ──正午前。
 普段通りであれば既に諸々の仕事を終え、小休憩を取る頃だろうか。そろそろ仕込みにも取り掛かる時刻だ。