《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「馬鹿っ! 何で外に出てきたんだ、早く戻れ!」

「でも…」

「いいから戻れ!!」

「う、うん…!」

 切迫した口調。もはや自分一人でどうにか出来る様な自体では無い。せめてユージーンを呼びに引き返そうとしたが足止めさせられる。

「おっと待ちな! この生意気なにーちゃんが大怪我しても構わないってか?」

「ぁ…っく! 離せよ…っ」

 大柄な男がセィシェルの胸ぐらを乱暴に掴みあげ、いとも簡単に足先が中に浮く。抵抗するも男の腕はびくともしない。

「だ、だめ!」

「なら、オレ達の言う通りにするんだな!」

「言う通りって?」

「っ…俺はいいから、早く…」

「随分と余裕じゃあねぇか、ああ?」

 セィシェルの鳩尾を抉る様に殴打する男。

「ぁぐっ」

「きゃああ! セィシェル!! っ…やめて! 言う通りにするからセィシェルをはなして!」

「なぁに、簡単な事だ。この酒場(バル)に住み込みで働いてる異国出身の女がいるだろう? その女をちぃとばかりここに連れて来るだけで……ん? よく見たらアンタがその対象(カモ)じゃあねぇのか?」

「そうに違いねえよ(かしら)ぁ! そっちから出て来るとはありがてえ」

 顔を見合わせニヤつく男達。