「でもじゃあねぇだろ!! 心配で心配で、おかしくなりそうだったんだからな!」

 最後の言葉に酷く衝撃を受け、動揺する。

「っ…! セィシェル。本当に、ごめんなさい」

 度重なる浅慮な行動、周りに迷惑ばかりをかける自分が本当に嫌になる。

「……ならもう行くぞ!」

 何も言い返せなかった。
 先程まで見ていたひと時の甘い夢は消え去り、目の前の現実が突きつけられたが逃げる訳には行かない。今は心配をかけてしまったユージーンとセィシェルにしっかりと謝ることが先決だ。この様な苦しい状況を作り出したのは紛れもなく自分自身なのだから。

「…っ」

 心を決めるとスズランは静かにライアの手を離し、やむなくセィシェルの引く手に続いた。
 しかし───。

「……待てよ。セィシェル、先にお前に話しがある」

「何だよ! 俺はあんたと話す事なんかねぇよ!!」

「……そうやって逃げるのならそれでもいい。でもスズランはお前のじゃあない…!」

 ライアがセィシェルの手を振りほどく。

「あっ…ライア!?」

 何が起きたのか、気づけばライアの腕の中に再び抱き寄せられていた。激しい雨から守る様な力強いその腕は僅かに震えている。