《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

　しかしライアの照れくさそうな表情と態度がそれを真実だと示しており、スズランも気恥ずかしくなって俯いた。

「うふふ。可愛い！　そう、はじめましてよね？　私の名前はヴァレンシアよ。ここ旧市街の寂れた酒場(バル)で店主をしながら占星術をしてるの。よろしくね」

　美しい笑みを浮かべるヴァレンシア。
　スズランも慌てて自己紹介をする。

「あ！　わたしスズランって言います。城下の街の酒場(バル)で働いてます！　こちらこそよろしくお願いします！」

「まあまあ！　なんて純粋な子！　本当ライアには勿体無いかもしれないわね…」

「ったく、何しに来たんだよ！　何かを伝える為に来たんじゃあないのか？」

　完全にヴァレンシアの調子に乗せられたライアは流石に痺れを切らして話題を変えた。
　途端にヴァレンシアの雰囲気が一変する。

「そうなの。依頼された内容についてよ」

「もう何か解ったのか！？」

「ええ…。手短に話すわね。この事件の黒幕はとんでもない人物かも知れないわ！」

「！？　……どう言う事だよ。とんでもない人物って」

「信じ難いし、まだ断定は出来ないけど…。それでも……マルティーン帝国が関わってる可能性が高いのよ」