《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

　今度こそ本当に思い知った。どうやってもこの恋は叶わないのだと。あれ以来全く姿を見せなくなったエリィとの関係もずっと気になっている。

「……エリィさんも、あの酒場(バル)の人も素敵な大人の女性で、とっても魅力的だもん。わたしが敵うはずないじゃない」

　諦めよう。想いに蓋をするのではなく、諦めるのだ。でもどうやって？　
　諦める方法が分からなくて湯船に涙を落とす。
　
「わたし、っ…どんな顔して浴室を出ればいいんだろう」

　胸が苦しくなる程思い悩む。

「っ……どうしたらいいの…？」

　更に湯あたりしたのか思考が回らなくなってくる。拍車をかける様に乳白(ミルク)色の湯から立ち込める甘い香りが脳を揺さぶる。寛いでいる場合では無いのだと急いで立ち上がった瞬間、目の前の景色がくらりと反転した気がした───。

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　何だろう。とても心地が良い。
　全身がとけてゆく様な快感。

　暖かくて、優しい匂いの風がスズランの髪や頬を撫ぜる。天気が良い日のお日様と風の匂い。

　自我を手放したのかの如く、浮遊感に全てを委ねてしまいそうだ。──全身を柔らかく包まれる感覚にふと瞼を持ち上げる。