《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

　信じられないほどに広くて豪華な部屋。更に浴室まで使わせて貰うなど、一体何が起こっているのかと半ば混乱気味だ。

「ライアは…、どうしてわたしをここに連れて来たんだろう」

　いくら考えみても疑問しか浮かばない。ライアには嫌われているとばかり思っていたのだが、先程から……いや。良く考えてみれば何時だってスズランに対して親切だった。多少子供扱いされる事については致し方ない。ライアから見ればスズランはまだまだ子供なのは事実。
　だが度々からかったり、時折見せるあの熱い視線にはどんな思いが含まれているのか。あの瞳にはどんな想いが──。
　一度瞳が合うと魅入られて逸らすことの出来ない美しい瑠璃色(るりいろ)。

「また、からかってるだけ？　それとも…」

　誰にでもお人好しで、気まぐれに優しい……。

　それだけの理由でこんなにも良くしてくれるものだろうか。やはり意図がわからず、切なさと不安だけが強まってしまう。
　しかし悶々と考えていても仕方が無い。湯が冷めてしまう前に湯船に浸かる事にした。広すぎると言っても過言ではない脱衣場で着ていた外衣(ガウン)を脱ぐ。香気な湯気が立ち込める浴室、湯船には乳白(ミルク)色の湯が張られていた。