スズランは扉の取手から一度手を離した。
ふと扉の横の大きく取られた弓型状の出窓に目を移す。窓からは店内の光が漏れ、中の様子を伺えそうだ。
───だが。この窓から店内を覗いた事を、スズランは激しく後悔した。後悔というよりも改めて現実に気付かされ、思い切り打ちのめされた。
ハリの言葉が脳内で蘇り、木霊する。
〝鈴蘭が何を見ても、僕は責任を取らない〟
〝行けば君の想いとやらはきっと粉々になるだろうね〟
まさにその通りだった。心臓に罅が入っていく様な痛みで息が止まる──。
「……っ」
小さな酒場。
狭い店内のカウンター席にライアの後姿を捉えた。ライアはカウンターの中にいる麗人と視線を交わしながら談笑していた。窓越しに見ても分かる程に熱く見つめ合っており、誰が見ても二人は恋人同士なのだと理解出来た。今にも口づけをしそうな位、互いに顔を近づける二人。
この光景を見る為にわざわざ此処までやって来たというのだろうか…。
「っ…やだ…、駄目…!!」
咄嗟に叫ぶが、声は虚しくも雨音にかき消された。しかし、祈る様なスズランの声が届いたのか、カウンターの中の麗人が不意にこちらへ視線を向け首を傾げた。同時にライアが振り返る。
ふと扉の横の大きく取られた弓型状の出窓に目を移す。窓からは店内の光が漏れ、中の様子を伺えそうだ。
───だが。この窓から店内を覗いた事を、スズランは激しく後悔した。後悔というよりも改めて現実に気付かされ、思い切り打ちのめされた。
ハリの言葉が脳内で蘇り、木霊する。
〝鈴蘭が何を見ても、僕は責任を取らない〟
〝行けば君の想いとやらはきっと粉々になるだろうね〟
まさにその通りだった。心臓に罅が入っていく様な痛みで息が止まる──。
「……っ」
小さな酒場。
狭い店内のカウンター席にライアの後姿を捉えた。ライアはカウンターの中にいる麗人と視線を交わしながら談笑していた。窓越しに見ても分かる程に熱く見つめ合っており、誰が見ても二人は恋人同士なのだと理解出来た。今にも口づけをしそうな位、互いに顔を近づける二人。
この光景を見る為にわざわざ此処までやって来たというのだろうか…。
「っ…やだ…、駄目…!!」
咄嗟に叫ぶが、声は虚しくも雨音にかき消された。しかし、祈る様なスズランの声が届いたのか、カウンターの中の麗人が不意にこちらへ視線を向け首を傾げた。同時にライアが振り返る。



