「───セィシェル。この方の言う通りにしておくれ……」
静かに響く声の方へ向くと、酒場の裏口の扉の前にユージーンが傘をさして立って居た。
「親父!?」
「セィシェル。スズを部屋で休ませたらカウンターはお前が入れ」
「は? 俺が!? 無理だって!」
「厨房はレフに任せて来た。ソニャにも少し場を離れると言ってあるから大丈夫だ……」
何時になく落ち着いた口調のユージーンは、何もかもを見透かす様な表情で佇んでいる。
こうなるとユージーンは梃子でも動かない。セィシェルは諦めて小さく息を吐いた。
「……わかったよ。親父がそこまで言うならよっぽどなんだな? 俺はとにかくスズを部屋に連れてく。ほら、スズ行くぞ!」
セィシェルがスズランの空いている方の手を引いてやや強引に歩き出す。それに合わせて一歩踏み出すと、ライアと繋がれていた手がするりと解けた。
「……あ…!」
掌からライアの持つ熱が失われて喪失感に似た焦りと寂しさに襲われた。思わず縋る様にライアを見上げる。一瞬ライアの手が追って来た様に見えたが、それは恐らく気の所為だろう。
最早地面で弾ける大粒の雨の如く消えてしまいたかった。
静かに響く声の方へ向くと、酒場の裏口の扉の前にユージーンが傘をさして立って居た。
「親父!?」
「セィシェル。スズを部屋で休ませたらカウンターはお前が入れ」
「は? 俺が!? 無理だって!」
「厨房はレフに任せて来た。ソニャにも少し場を離れると言ってあるから大丈夫だ……」
何時になく落ち着いた口調のユージーンは、何もかもを見透かす様な表情で佇んでいる。
こうなるとユージーンは梃子でも動かない。セィシェルは諦めて小さく息を吐いた。
「……わかったよ。親父がそこまで言うならよっぽどなんだな? 俺はとにかくスズを部屋に連れてく。ほら、スズ行くぞ!」
セィシェルがスズランの空いている方の手を引いてやや強引に歩き出す。それに合わせて一歩踏み出すと、ライアと繋がれていた手がするりと解けた。
「……あ…!」
掌からライアの持つ熱が失われて喪失感に似た焦りと寂しさに襲われた。思わず縋る様にライアを見上げる。一瞬ライアの手が追って来た様に見えたが、それは恐らく気の所為だろう。
最早地面で弾ける大粒の雨の如く消えてしまいたかった。



