《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「ちがうっ…俺はただスズランを守りたいだけだ！」

　普段冷静な印象のライアが声を荒らげ、反論した事に動揺したスズラン。だが、更に信じ難い発言に耳を疑った。

（え…っ！？）

「はぁ？！　守る？　何から？？　俺だってお前みたいな奴からずっとスズを守って来たんだ！　怪我したくなかったら早く俺たちの前から消えろよ！！」

　噛み付く様に威嚇するセィシェル。どうしてもライアには特別辛辣な物言いだ。やはり両者間には何かあるのだと確信したものの、睨み合って敵対する二人の姿など見ていられなかった。

「やめて……二人とも」

　仲裁の声は雨音に掻き消されたかに思えたが、ライアの耳には届いたらしい。ふと冷静さを取り戻したライアは低めの声で言葉を発する。

「……とにかく今はお前にかまっている暇などない。俺はスズランとマスターに話があって来た。お前は店に戻ってくれ」

「はっ！　こっちは話す事なんかないね！　今すぐ帰るのはあんたの方だ！！」

　両者供一歩も引かず睨み合いが続く。
　ライアが力を込めたのか、掴まれていた腕に強い痛みを感じスズランは眉を寄せて声をあげた。

「ライアっ、、腕……いたい！　はなして…っ」