《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

　本当はライアに助けられ、酒場(バル)まで送ってもらった。だがあまりにも落胆しているセィシェルを前に正直には言えず嘘をついてしまった。目を腫らす程に泣いた原因もライアにある。

「セィシェル…。わたし、わがまま言ってごめんなさい。もう街に行きたいなんて言わないから……」

　セィシェルは瞳を伏せ、スズランの主張を軽く流した。

「……今日は疲れただろ？　店、休んでいいから」

「え！　わたしなら平気！　だからお店のお手伝いはちゃんとやらせて…！」

「なんで…っ…そんなに、あいつに……」

　聞こえるか程の小さな声で何かを言いかけるセィシェル。

「え？」

「……いや。だったら時間まではしっかり休んでろよ」

「う、うん」

　セィシェルは気落ちした様子のまま、一旦自室へと入って行った。スズランも一旦自室へ戻り、開店の時間まで気持ちを落ち着かせる事にした。


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「スズちゃん、最近なんだか元気がないねぇ！」

　常連客である八百屋の店主が気さくに話しかけてくる。

「え！　そうですか？」

「うんうん。その憂いに満ちた表情…！　さては、恋煩いだな？　良かったらおじさんが相談に乗ってあげるよ？　なぁんて…」