《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「スズ…！！　無事に帰ってた…っ、良かった…。俺、あちこち探したんだぜ…」

　スズランの姿を確認するとセィシェルは安堵したのか長椅子(カウチ)に仰向けに倒れ込んだ。汗で服が身体に張り付き、激しく肩で息をしている。

「セィシェル！　ごめんなさいっ…わたし…」

「いや、いい。スズが無事ならいいんだ。俺が目を離したからだ」

　天井を仰いだまま弱気な声を出すセィシェル。てっきり先に帰った事を咎められると思っていたので調子が狂う。

「違うの、勝手に先に帰ってきたのは…」

「ごめんな、スズ……って、お前泣いたのか？」

　スズランの腫れた目を見据え、セィシェルは悔しそうに顔を歪める。
　スズランは一連の出来事をライアに関する事のみ、ぼかして伝えた。
　セィシェルの話によるとあの後、例の男二人組が商店街で小さな騒動を起こして民兵の護衛隊が出動したというのだ。その時に護衛隊からこれまで二人組が起こした様々な悪事を聞き、更に連行される小男を見て血の気が引いたセィシェルは虚偽の証言にすっかり騙された自分を責め、必死の思いで酒場(バル)まで帰ってきたと言う。

「もうぜんぜん平気だよ！　け、警備員の人が偶然通りかかって助けてくれたの。その後もお店の前まで送ってくてれて…！」

「あいつらに何もされなかったか？　俺がしっかりしてればこんな怖い思いさせずに済んだんだ。ほんとごめん…」