《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

 男の声の異変に恐る恐る瞼を開くとライアが大男の腕を掴み上げていた。

「なっ…何なんだてめぇ!? っつ!? 離せ……う、腕がっ、折れちまう!」

 男が怯んで手の力を抜いた隙にライアの腕の中に引き寄せられる。

「ラ、ライア…!」

 力強いライアの腕に守られると先程までの恐怖心が不思議と和らいでゆく。

「貴様ァ! 俺の獲物を横取りする気か?」

「この野郎ッ! ジェローム兄貴の楽しみを邪魔するとどうなるか、思い知らせてやるぜぇっ!!」

(いやっ、危ないっ!)

 小男が背後から飛び掛ってきたがライアはそれを難なく躱した。男はそのまま勢い余って壁に激突する。

「つぅ。て、てめぇっ……何しやがる!」

 小男はますます逆上し、よろめきながらも拳を振り上げ向かって来る。今度こそ危ないと身を強ばらせたがライアはその拳を受け流し逆に力を利用して大男の方へと投げ飛ばした。衝撃で男たちが地面に転がる。

(!?)

「…っ!? くっそ!! 何なんだよ、お前何モンだ?」

「……お前らこそ何者だ? 普段からこんな事してるのか? このまま民兵警備に突き出してやってもいいんだが?」

 ライアはスズランを背に隠す様に立ち、二人を見下ろした。