《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

 しかしすぐ様後ろから伸びてきた手に髪を掴まれてしまう。

「離してっ! っ…痛い!!」

「はぁぁ……だりぃ。何してくれんだよォ? おい、エヴラール、路地の入口見張っとけ。この女にはたっぷりお返ししてやらねぇとな」

「りょ、了解ッス」

 大男はそう言ってスズランの髪を手網の様に引き、どんどん路地の奥へと入っていく。

「やめて…っ」

「大声出すんじゃあねえ!」

 どすの利いた男の声に身が竦む。
 路地の表でセィシェルの声がした。しかし口を塞がれ助けを求める所か、声すら出せない。

「おいスズ!? どこ行った? ……あの、すみません。この辺に珍しい髪色の奴いませんでしたか?」

「ああ~! その子ならさっき果実茶の店辺りで見たかもッス」

「ンン…!」(セィシェル…っ!)

 小男が路地の入口でセィシェルに偽りの情報を吹き込む。

「ったく。勝手に動くなって言ったのに! すみません、助かります」

「いえいえッス〜」

「んーっ!」(まって!)

 小男はセィシェルの後ろ姿にひらひらと手を振ると、踵を返してニヤつきながらこちらへ戻ってきた。

「良くやったエヴラール。じゃあ褒美としてお前はそこでじっくり見てろ」

「へっ?」

「何か文句あのんかァ?」

「い、いやぁ。そんな事ねっスよ…?」

「ふん」