《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「……いや、笑って悪かった。そうだな、一般的に、ね。基本は同じ、男も女も関係ない。状況にもよるだろうが、愛しいと思うから相手の唇を奪う。当たり前の事だ」

「……そう、なの?」

「少なくとも、俺はそうだよ…」

 警備員の思いのほか本気な返答に僅かな勇気が湧いてくる。スズランはライアを想い、ほんの小さな声で呟いた。

「本当に……そうなら、いいな…」

「ん? 今何か…」

「ううん……ありがとう。教えてくれて」

「……スズラン。冷えるからこれを」

 警備員はそう言いながらおもむろに羽織っていたマントを脱ぎ、頭からふわりと被せてくれた。

「わぁっ!? そんな事したら警備さんが風邪ひいちゃうよ! わたしなら平気なのに」

 マントから顔を出し警備員を見上げる。相変わらず逆光で顔が良く見えない。

「いいから……戻るまで着ててくれ」

「だって、これは…」

 王宮の警備員なのだ。従ってこれはその制服のマントに違いない。
 更に警備員は上着の懐から何かを取り出し、スズランへと手渡した。

「これを。戻ったらあたたかい飲み物と一緒に食べるといい。元気が出る」

「……これ、お菓子?」

「俺の姉の手作りだが、味は保証するよ」