「少し外の空気を吸ったら眠れるかな……」
スズランは室内履きから外靴に履き替える。外へと繋がる扉をそっと開き、外階段を降りて裏庭に出た。
昼間は心地の良い風が吹くこの裏庭も夜半がすぎた時間ではひんやりと冷たい空気に変わる。小鳥たちの代わりに夜の虫たちが奏でる音色が耳に心地よい。
「あれ、下に降りたらお月様見えなくなっちゃった」
美しい望月は丁度森の樹々に隠れてしまった。葉の隙間から僅かにこぼれる月の光を追うと、まるで誘われる様に森の中へと足を踏み入れていた。いくら許しを得たからといえ、こんな夜更けに立ち入るのはどうかとも思ったがスズランの足は森の奥へと歩みを進める。時たま強く吹く風がざわざわと森の木々を揺らすが不思議と恐怖心はなかった。この森はちゃんと守られているという事を知れたからだろうか。
「少しだけ……夜のおさんぽ」
ついには森を抜け王宮の横庭まで来てしまった。スズランは小川に架かる石橋の上で足を止めた。夜に此処へ来るのは初めてだ。
「小川までならいいって、言ってたもん」
優しく流れる小川は月の光を受けてきらきらと煌めいていた。見上げると丁度よく顔を覗かせる望月があまりにも美しく、思わず息を飲んだ。
その時だった。
「っ…スズラン…?!」
突然に名を呼ばれ、心臓が止まりそうになるも、咄嗟に返事を返す。
「だれ…!? もしかして……警備、さん?」
スズランは室内履きから外靴に履き替える。外へと繋がる扉をそっと開き、外階段を降りて裏庭に出た。
昼間は心地の良い風が吹くこの裏庭も夜半がすぎた時間ではひんやりと冷たい空気に変わる。小鳥たちの代わりに夜の虫たちが奏でる音色が耳に心地よい。
「あれ、下に降りたらお月様見えなくなっちゃった」
美しい望月は丁度森の樹々に隠れてしまった。葉の隙間から僅かにこぼれる月の光を追うと、まるで誘われる様に森の中へと足を踏み入れていた。いくら許しを得たからといえ、こんな夜更けに立ち入るのはどうかとも思ったがスズランの足は森の奥へと歩みを進める。時たま強く吹く風がざわざわと森の木々を揺らすが不思議と恐怖心はなかった。この森はちゃんと守られているという事を知れたからだろうか。
「少しだけ……夜のおさんぽ」
ついには森を抜け王宮の横庭まで来てしまった。スズランは小川に架かる石橋の上で足を止めた。夜に此処へ来るのは初めてだ。
「小川までならいいって、言ってたもん」
優しく流れる小川は月の光を受けてきらきらと煌めいていた。見上げると丁度よく顔を覗かせる望月があまりにも美しく、思わず息を飲んだ。
その時だった。
「っ…スズラン…?!」
突然に名を呼ばれ、心臓が止まりそうになるも、咄嗟に返事を返す。
「だれ…!? もしかして……警備、さん?」



