「ごちそうさまでした」
園子は両手を合わせて言うと、食器を流しに置いた。
「ありがとう。園子、伊織、自分の部屋の荷物をまとめなさーい。」
園子と伊織は はーい と二階へと上がる。
階段を上がって手前が伊織、その隣が園子の部屋になっている。
「えーと。これはここで……」
私服に着替えた園子は教科書類をまとめてダンボールの中に入れていく。
他のダンボールにはぬいぐるみや本が入っている。
小物をダンボールに全て入れて部屋全体を見る。
ベッドや机といった家具は全て下に下ろしてある。
真っ白の壁と日が射す窓だけとなった部屋を見て園子は寂しくなった。
「もう、ここには帰らないんだよね」
最後のここの思いでとしてくまなく見てから部屋を出た。
「あっ終わった?」
同じく空になった部屋から出てきた伊織はダンボールをもっていた。
園子より量は多い。
「うん。伊織くんも終わったのかな?」
伊織はうなずいて階段を降り始めた。
園子もそれに続く、が
「っと……わぁ!」
ダンボールで足元が見えず足を滑らせてしまった。
園子はとっさに目をつむる。
「風よ、起これ!」
園子はその言葉を聞いて目を開ける。
園子は階段にぶつかることも滑り落ちることもなかった。
そもそも階段に足がついていない。
園子からはわずかに風がなびいており、髪がゆらゆらと揺れている。
「お母さん!ありがと」
園子は階段の下にいる母を見て安堵した。
母の足元には緑色の魔法陣が輝いている。
母が魔法を使ったお陰で園子は怪我をすることはなかった。
「気お付けなさいよ。」
母は園子を隣に下ろした。
園子は はい と反省。
「部屋の荷物はそれだけなの?」
園子と伊織は うん と頷く。
それを確認した母は、車に乗せてそのまま乗るように言った。


