帰る途中はサーランに色々な場所を教えてもらい、大体の場所は分かった。

アンブレラとレイの家は園子、伊織の家とサーランの家の近くだということが分かった。

徒歩10分で付ける距離だ。
そして、この世界の乗り物は少ない。

魔法が発達したため、機械類の発達が全く無かった。

人間界で住んでいたころの技術も今ではあまり残っておらず、移動手段としては馬車が一般的である。

といってもやはり魔法が使えるため、転移や魔力を使った乗り物、ほうきなどが多く上を見上げればあちこちでほうきに乗って飛んでいる。

中には、ほうきを使わず飛んでいるものもいる。

サーランがいうに風や空間、重力それぞれどれかを操り飛んでいるのだとか。

園子が階段から落ちようとした時に里花が風魔法を使って助けてくれた時に浮かんでいたのと同じ原理だ。

「で、でもあれが出来るのは極一部の人だけ…でほとんどの人は出来ないです。」

サーランはオドオドしながらも一生懸命説明してくれた。

意外にもサーランの説明はとてもわかりやすく園子と伊織はフムフムと頷く。

話しているといつの間にか家に着いていた。
あっという間であったためもう少し話をしたかった気持ちはあるが、明日の準備もあるためそこで別れた。

「あっ!サーラン!」
「はっはひぃ」

園子が家に入ったのを見て伊織はサーランに声をかけた。

いきなり声をかけられたサーランはビクッと肩が上がり言葉を噛んでしまった。

伊織はそれを見てクスッと笑うとサーランは顔を赤くし、恥ずかしそうにしている。

伊織は 可愛い と思いながらサーランに聞いた。

「サーランってあの時の砂菜花だよな…」
「ぅえっと!そっそうです。」

いきなり人間界での名前を言われて頷いた。

慣れない人間界での生活で友達ができずいつも男子達にいじめられていたサーランを救ってくれた人物である伊織をサーランは忘れるわけがなく、挨拶に来た時は驚いていた。

だが、今こうしてあの時の自分を覚えてくれていた伊織はさらに驚きはしたがそれ以上に嬉しかった。

また顔を赤くしたサーランを見て伊織はまた笑う。

「やっぱり!また会えて嬉しいよ!
あっ、あの時のもってるよ!」

伊織はあるものをポケットから取り出した。
それは和柄の小さな布の袋だった。

「あっそれ私があげた匂い袋」

サーランは助けてくれたお礼にあげたものだ。
男子にあげるのもどうかと思ったがその時にあったのがこの匂い袋だったのだ。

「あっ、私も…」

そう言ってサーランもスカートのポケットから取り出した。

それは匂い袋と同じ大きさの布袋。
その袋の中にブレスレットが入っていた。

里花から貰ったブレスレットで、
緑色と白色の紐上のものを三つ編みにし所々に珠がついている。

「あっ!まだもってたんだ!」

伊織はそのブレスレットを見てニコッと笑顔になった。

里花が言うにはこのブレスレットはお守りのようなもので守りたいと思った相手にあげると効果があるらしい。

いじめられていたサーランには丁度いいと思い渡したものだ。

それを今でも持っているのはとても嬉しいものだ。

サーランは頷いて大切そうにブレスレットを布袋の中にしまった。

「それはつけてた方がいいと思うぜ?」

伊織はそう言ってサーランの布袋を取り上げ、腕につける。

「あっありがとうございます」

サーランは顔を赤くしながらブレスレットを優しく手で包んだ。