「…おえ」
伊織は喉まで来ているものをなんとか抑えて我慢する。
園子は3回目でもあるためか何となく慣れた。
レイとサーランはずっと魔法界に住んでいるため勿論転移にはなれている。
「だっ大丈夫ですか?」
サーランは心配そうな顔で伊織の背中をさすった。
数分でやっと吐き気がおさまり伊織は一息つく。
「俺、転移魔法嫌いになりそう…」
少し涙目で呟く伊織の言葉にサーランはクスッと笑う。
「それで、追いかけられていた理由は?」
伊織が落ち着いたことを確認したレイは園子に聞いた。
園子は先程までのことを簡単に話した。
「世話係の話か…で誰にしたんだ?」
レイの問いに園子はレイを伊織はサーランを指さした。
「「えっ…」」
指をさされたレイとサーランはポカーンと口を開いたまま固まってしまった。
「ちょっ…待ってください!
私が世話係だなんて…無理です!私のことはあの人たちから…きっ聞いているはずです!」
いち早く我に返ったのはサーランであった。
その後にレイも我に返り自分が世話係をすることに反対した。
「なんで?
知らない人より知っている人の方が信頼出来るし。」
伊織も少しムウとしてそっぽ向いた。
どうやら、変える気はさらさらないようだ。
「…仕方ない…本人が決めるからな…俺らに拒否権はないだろ。」
レイは諦めたようにため息をついた。
サーランは えっ… と慌て気味であった。
「だが、こちらから話すことはあまり無い。
それと、学校では話しかけるな…いいな?」
レイはそれだけを言って帰ってしまった。
転移して園子たちが知らない場所にいるため、サーランと一緒に帰ることになった。
「レイくんってあんなに冷たかったっけ?」
園子はレイが見せた冷たい視線が気になり呟くように言った。
それを聞いたサーランはフルフルと首を横にふった。
「いえ、昔はフローラン一族の子供たちと仲が良かったです。
とても元気でみんなの中心にいました。」
サーランは懐かしむような眼差しで言った。
園子はその言葉で昔を思い出していた。
1人ぼっちで今の園子よりも暗かった小学時代、唯一声をかけてくれたのがレイであった。
レイは5年生の時に引っ越してきた転校生で席が隣であったため話す機会が多かった。
もちろん、とても明るかったレイは学校では人気者でいつも人の中心にいた。
園子が笑顔を見せるようになったのもレイのおかげと言えるだろう。
そんなレイが今では笑顔すらなくいつも無表情であった。
「私が11歳…レイさんが13歳の時に事件があってそこから無表情になりました。」
サーランは悲しい目で語った。
そうなんだ と園子は静かに聞いた。
(やっぱり何かあったんだ…3年間のあいだで)
園子は心の中で呟きながら家までの道を歩いていった。


