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「いってきまーす!」

伊織はサッカーボールを持って家を飛び出した。
今日は公園で友達と遊ぶ約束している。

「……あれ?○○は…」

だが、公園に行くと友達はいなかった。
次の日に聞くと熱がでて行けなかったそうだがこの時は知るよしもない。

公園にある滑り台に座って待つことにした。

「そこどけろよ!」
「えっ…あの…その」

同じ年頃の声が聞こえた。
その方向に目を向けると伊織と同じくサッカーボールを持った少年3人と少女がいた。

少女は茶色の髪にオレンジの瞳にメガネをしており、オロオロしていて弱々しい印象だ。

その少女を囲む少年3人はニヤッと笑った。

「まぁいいや!おいっサッカーしようぜ!」

少年はそう言って少女に向けてサッカーボールを蹴った。

それは少女に直撃。サッカーボールは違う少年のもとに転がりまたそれを蹴った。

「いっ痛い…やめて…」

少女はその場で縮こまり痛みに耐えていた。
目には薄らと涙が溜まっていた。

「…!何やってるんだ!」

伊織は自分のサッカーボールで少年たちのサッカーボールにぶつけた。

2つのサッカーボールは蹴った威力でそれぞれ逆方向に転がる。

「ちっ、邪魔すんな!」

楽しそうに蹴っていた少年は不機嫌な顔になった。

だが、伊織を見た瞬間血の気が引いた顔をする。

「やべっ」

少年たちはさっさと逃げてしまった。

この時の伊織は喧嘩に強く、いじめっ子たちを成敗してきた。

いじめられっ子からするとヒーローのような感じだろうか。

さっきの少年たちは伊織と同じ学校の一個下の後輩で、もちろん伊織のことも知っている。

「大丈夫か?」

少年たちが見えなくなったのを確認し、少女に声をかけた。

「うぇ…と、その…大丈夫でしゅ…」

伊織が顔をのぞき込んできたことに驚き少女は言葉に噛み、顔を赤くした。

そんな少女を見て伊織はおかしくなって笑った。

「そういえば、その制服…天水大附属の」

伊織は少女に手を貸して立たせたときに気がついた。

少女は国立天水大学附属 宮離(みやり)小学校の制服を来ていた。

伊織が通う学校の1番近くにある学校で、交流会もよく行われる。

「はっはい。私は…天水大附属宮離小5年…
たっ立花 砂菜花 (たちばな さなか)です

さっきはあり…がとうございました」

砂菜花は下を向きながらお礼を言った。
伊織は おう! と砂菜花の頭を撫でた。

「俺は高屋野大付属小6年 菅原 伊織だ!」

伊織はニッコリと笑顔で言った。

その後、友達も来なかったため伊織は砂菜花と一緒に遊んでいた。

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「そうだったの」

話を終え、園子はフムフムと真剣に考えた。

同じ髪、瞳の色で立花の苗字。
確かに、サーランである可能性は高い。

「また、聞いてみたら?あの時の子ですかって」

「はっはぁ!そんなの言えるかよ」

伊織は顔を赤くしてそっぽを向き、それに園子は クスクス と笑う。

「…おっと、そろそろ寝ないとやばくないか?」

伊織は時計を確認して言った。
時計の針は12を指す手前であった。

「わっ!ほんとだ。明日は早いよね…寝なきゃ!」

園子も時計を確認して、布団の中に入り始めた。
伊織も頷いて おやすみ と部屋を出ていった。

「確か、明日は一族の長の家に行くんだよね…」

園子はそう呟いて目を瞑った。