「さて、引越しも完了した事だし…お隣さんにご挨拶にいきましょうか」

台所や各自の部屋の掃除が終わったのは丁度夕焼けが綺麗な時間だった。

アンブレラは自分の家に帰り、園子たちは左隣の家に向かった。

左隣の家は園子たちと同じ木造。
大きさはこちらの方が大きいが二階建てであった。

暖簾は紫色にオレンジ色の紋章だ。

「あっこんばんは」

戸を開けようとしたと同時に戸が開いた。
里花はニコッと微笑みながら目の前の少女を見た。

「…えっ…もっ、もしかしてリカ…様?」

少女は目の前にいる魔女を見て驚きオドオドする。
里花は頷いて、ご挨拶に来たことを伝えた。

「今日、隣に引っ越して来ました菅原です。よろしくお願いします。」

優介が前に出て一礼した。
少女は我に返って慌てたが こちらこそ と一礼した。

「私は サーラン・フローランです。
父と母は今出張でいません。」

サーラン・フローラン
茶色のロングヘアで、オレンジ色の瞳。
横髪を紐で結んでおり、メガネをしている。

「久しぶりねサーラン…大きくなったわね!」

里花はサーランに抱きついた。
サーランはいきなりで驚き何もすることができない。

「おっお久しぶりです。あっ…あの!」

サーランは困惑しながら後ろの2人が気になった。

「ああ、ごめんなさいね。うちの娘と息子よ。」

里花はサーランが言いたいことが分かり園子と伊織の後に行き、肩に手を当てた。

「菅原 園子です!」
「菅原 伊織だ。よろしくな!」

園子と伊織はニコッと笑う。

(…笑顔がリカ様に似てる)

2人の笑顔を見てサーランは微笑した。

〜・〜・〜・〜

「さて、これでご挨拶も終わったわね!」

サーランの家とは反対の家と前下にある家に挨拶をして家に帰ってきた菅原一家は夕食の準備を始めた。

「今日は何か色々と大変だったな」

伊織は園子の部屋で欠伸をしながら言った。

夕食もお風呂も終わり、後は寝るだけであるが昔から寝る前に姉弟で話をするのがお決まりだ。

「あっ!そうそう!お母さんから聞いたのだけど、サーランちゃん同じ学校に通ってるんだって!」

園子は嬉しそうな表情で言った。
まだ、アンブレラとレイ以外で同じ年齢辺りの人と話したことがないため気になっていたのだ。

「……」

テンションが上がっている園子に対して伊織は手を顎に当て、何か考え込んでいた。

「どうしたの?」

それに気がついた園子は伊織の顔をのぞき込んだ。

「…いや…そのサーランって子…見たことある気がするんだよな」

伊織は うーん と記憶を辿ってゆく。

「それっていつ?」

園子も見たことがあるかもしれないと尋ねた。

「確か…俺が小6だったかな…?」

記憶がそこまでは分かるのだが何処で見たかが分からない。

学校、通学路、商店街、何処を探してもサーランの姿は現れない。

「あの茶色の髪でオレンジの瞳…そんでもって弱々しい…ん?」

最後の言葉で何となくピンと来た。
弱々しい少女が公園でいじめられていた記憶だ。

「思い出した…」
「えっ!ほんと!」

伊織が呟き、園子は聞かせて! と眼でうったえた。

「あれは…」

伊織は語り出した、伊織が小6のときある公園での話し。