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「……あっ嶺!園子!」

アンブレラは空間の歪みが発生した場所に振り向く。

園子を抱き上げた嶺が現れた。
それを確認したアンブレラたちは安心する。

「よかった。怪我はない?」

里花が目の前まで来ては園子と嶺の顔や腕、足などをくまなく見る。

「だっ大丈夫だよ。お母さん」

園子は苦笑いのまま下ろしてもらい、お礼を言おうと後ろを向くと嶺はいなかった。

いつの間にかゲートのある部屋に向かって歩いていた。

「あっ、嶺!」
「先に帰る」

アンブレラが制止しようとしたところで嶺がそれだけを言って扉の向こうへと消えた。

「あらら、変わったわね」

里花は心配な顔だった。
その理由は園子たちは知らない。

「さぁ、そろそろ魔法界に行きましょう。
黄昏時は1番危ないですから」

アンブレラは話を変えるように言った。

黄昏時は人間界と魔法界との空間の狭間が大きくなりそのまま帰ってこられないこともある。

そのため、黄昏時はゲート立ち入り禁止が出る。

今はまだ昼だが準備もあるため早めに出発したいのだ。

「そうだな。園子、伊織準備するぞ」

優介は頷いて2人を車のある広場まで移動した。

そして、階段を降りる際に里花を見た。
いつもの里花の表情であったが、とても悲しそうな目で優介をずっと見ていた。

優介は 大丈夫だ、行くぞ と口パクで言った。
それを理解した里花は頷いてトボトボと歩き出した。

先に行くよう園子と伊織に言って、里花を待った。

「どうした、そんなに弱い奥さんにだったか?」
「……ムゥ、優くんの意地悪」

里花が頬を膨らませる。
だが、やはり悲しげな目は変わらなかった。

「あのことは仕方がない。お前がいつまでもそのままだとあの子達が不安になるぞ。」

優介は里花の頭をポンポンと撫でる。

里花はこの優介の手が好きだった。
一瞬で安心させてくれるようなこの手が好きで里花は頬を赤くした。

その表情を見た優介は クスッ と笑う。

「ほら、行くぞ」
「……うん」

このラブラブな夫婦を暖かい目で、ニヤニヤしながら見ているアンブレラのことなんて気づいてなかったろう。

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「よしこれで全部かな」

自分の荷物を札にしまう。
やり方を教えてもらい数分で使いこなせるようになった園子と伊織に轟は感心していた。

「やはり2人の子じゃのう。
昔から魔法ののみこみが早い里花さんと優坊じゃったからなぁ」

轟の言葉に優介は苦笑いし里花は でしょ! と自慢顔だった。

「さぁ、準備もできたし行くわよ!魔法界に!」

里花は笑顔で園子と伊織に言った。
園子と伊織も里花に似た笑顔で おー!
と楽しみを表した。