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「……ん…」
「あっ起きた?」
園子は嶺の顔をボーと見るがだんだん脳が活性してくると勢いよく起き上がった。
そして周りを見る。
周りは全て虹色で下を見ると落ちてしまいそうなよく分からない場所だった。
園子は裂け目に吸い込まれてからの記憶がない。
「ここは空間の狭間だ。簡単に言うと空間と空間を行き来する道。
その空間に入るときの圧力に負けんて気絶したんだろうな」
嶺はフードを被ったままで顔は見えない。
だが、首から下げているペンダントは知っている。
少年が転校する前にくれた翼に六芒星が描かれた宝石のついたペンダント。
色は青色。
少年が持っていたのと同じであった。
「……嶺…くん?」
園子は嶺の話を聞かず呟くと嶺はピクリと僅かに動揺が表れた。
「……なぜそう思う?」
嶺はさっきよりも低い声で言った。
園子は そりゃ と答えた。
「そりゃ、ペンダントが一緒だったから!
それにアンブレラさんがあなたのことを嶺って呼んでいたもの。
違うの?立花 嶺くん」
園子はもう一度聞いてみた。
もし本当に違っていたらものすごく恥ずかしいがそれは絶対にないと確信していた。
「……さぁ、どうだろうな」
嶺はペンダントが出ていたことにようやく気がついた。
そして、急いでペンダントを服のなかに入れ、フードをつかみさらに深く被った。
その素振りに園子は ムゥ となった。
「なんでフード被ったままなの?」
「……うるさい」
嶺の低めの声で園子はビクッとなる。
嶺は あっ と何か言いたげだが口をふさいだ。
「ごめんなさい」
親に怒られた子供のように園子はシュンとして謝る。
「……はぁ、とりあえずここから脱出するぞ」
嶺は立ち上がり園子に手を出す。
園子は うん と頷き嶺の手をとり立ち上がる。
「ここから出るにはどうすればいいのかな」
園子は上下左右前後全く同じ景色であるこの空間が怖くなり心配になる。
「大丈夫、言っただろここは空間同士を行き来する道だと。
緑の民がある空間に向かえばいい……」
嶺は園子の前を歩きながらそう言った。
園子は嶺のローブの端を掴んだままだった。
初めて魔法界に行くというのにこんな悲劇に出くわせば怖くもなる。
「……怖いか?」
嶺は前を向いたまま呟くように聞いた。
園子は うん と小さく言った。
「怖いよ。さっきの緑の民の人が襲ってきて……」
園子はあの緑の民の女性を思い出して震える。
「ああ、あれは落人だからな。仕方ない。」
「落人ってなに?」
また出てきた単語に園子は?を浮かべる。
ずっと人間界にいて家族以外の魔法使いを知らないのだからしかたがないことだ。
「…落人……ゲートキーパーである民たちがもつ病みたいなものだ。
ゲートを守護する民たちはそれなりの負荷がある」
嶺は歩きながら話してくれた。
ゲートを守護するため民たちはそのゲートを安定にさせるための魔法がありその魔法は民の純血の者しか使えない。
その魔法を月に1回使うという。
「その魔法は強力なんだ。
もちろんそれに耐えられない者も出てくるだろ?」
何事にも相性というものがある。
その魔法に弱い者は少なくとも2人はいる。
「確かに……じゃあその耐えられなかった人が落人ってこと?」
「そういうことだ。
耐えられなくなると精神を壊されてしまうらしい。
だから、あんな風に暴れだす」
嶺が説明を終えるとのと同時に止まった。
そして、左側を向いた。
園子もその方向を見ると、虹色であった景色に円形に歪んだ場所があった。
「これがその空間の出入口だ。
周りをよく見るとたくさんある。」
嶺が説明をし、園子は上や右など振り返ってみる。
分かりずらいが確かに歪みがあった。
「たまに奈落の底や火山の頂上だったりするから気を付けろ。
少し前に行けばその空間が見えるから」
そう言ってその歪みへと歩き出した。
園子は嶺の言葉を聞いて心配になってきた。
ローブを掴んだまま止まってしまい引っ張る形になる。
「……はぁ、ったく」
嶺はため息をつき、園子を抱き上げた。
園子は驚き顔をあげると嶺の顔が見えた。
嶺もこちらを見ていたため目があった瞬間そらされた。
幼い嶺の面影が少しあるが整った顔で大人になったんだと思わせる美形。
髪は黒色。
右は水色の瞳で左は黒色に紫色の幾何学模様が描かれた眼帯をしていた。
「やっぱり嶺くんだ!」
園子は恐怖を忘れて微笑んだ。
1番会いたくて1番安心する人が近くにいるのだから。


