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「さて、もう行ったよ。」
アンブレラは園子と伊織の魔力が上の階に行ったことを感知して、そう声をかけた。
一緒に喋っていた座布団のある場所より奥にある大黒柱となる大きな柱がある。
その後ろから黒のローブを着た人が現れた。
アンブレラより背が高い。
「……さっきの」
呟く声は低く男の声だ。
アンブレラは そうだよ と頷く。
「やっぱり人間界ではダメみたいだったね」
「ああ」
男は園子と伊織が出ていった扉の方向をずっと見ていた。
「で、どうするの?先に帰る?」
「……アンは?」
この男はアンブレラのことをアンと呼んでいるようだ。
「えー、昔みたいに姉さんって呼んでよー」
男の質問に答えず文句を言う。
どうやらアンブレラより年下のようだ。
「……」
男は質問の答えが返ってくるまで待った。
アンブレラは諦めたのか頬を膨らませる。
「むー…一緒に行くよ。リカ様もいるから護衛みたいなものかな」
「……いらないと思うがな」
男は扉に向かって歩きだした。
アンブレラは そうだけど と言いたげだが男の言っていることはその通りなので何も言えない。
「先にか『きゃーーー!!!』」
男の言葉と重なるように悲鳴が上がった。
声は上の階からだ。
「っ!!!行こう!」
アンブレラは急いで上に行く。
それに男は頷いてアンブレラの後に続いた。
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アンブレラと男が話をしている少し前のことだ。
「アンブレラさんってすげぇ綺麗だよな」
伊織が階段を歩きながらそんなことを言った。
建物の中は木造で古く階段を1つずつ踏むと ギシッ と軋む音がする。
園子は そうだね と頷いて階段を登り終える。
上の階はアンブレラがいる下の階とは違い部屋が別れていない。
だが、奥には1つの大きな扉があり木ではなく金属でできていた。
「あら、話はもう終わったの?」
里花と優介は伊吹と南美と対面するようにして座布団に座り会話をしていた。
園子と伊織は頷いて父と母の元に行く。
「それじゃあ、そろそろお開きかな」
伊吹は残念そうに座布団を片付けていく。
園子と伊織とアンブレラの話が終わるまでの暇潰しのようなものだったらしい。
「まぁ、そう言うな」
優介は苦笑する。
これからは普通に会うことができると言うのに…と。
「園子、伊織、車に戻って荷物をまとめるわよ」
「「まとめる?」」
引っ越す時に荷物はまとめてあるのに何をまとめるというのか、
園子と伊織は言っていることが分からず首を傾げる。
「ええ。そうよ!」
里花は頷いて1つのカバンを見せてくれた。
その中には不思議な文字と幾何学模様が描かれた札が入っていた。
「これを荷物に貼るとこの札の中に荷物が入るの。」
ほえー と園子と伊織は不思議そうにその札を見た。
伊吹と南美は片付けを終えて里花と優介に話しかけた。
「とりあえず手続きをするから里花と優介はこっちに。
すぐすむから園子と伊織はここにいたらいい」
伊吹と南美に案内されて4人は奥の部屋に入っていった。


