あの夏をもう1度

「その浴衣もう着ないんだと思ってた」


「あー、うん」



そのつもりだったけどね。


別れたときに着てた浴衣なんて。
もう捨ててしまいたかった。
でも、思い出は捨てれなかった。



「もう1年たつんだな」


「そうだね」


「あの時お前が泣きながら歩いてるからめっちゃ焦ったよ」


「はは」



乾いた笑いしかできない。


1年前と変わったこと。

心から笑えなくなった。



「俺じゃお前の傷は癒せねーか」



圭太がふっと笑う。



「圭太?」


「俺、あの日から一番近くにいたつもり」


「うん。そのとおりだよ」


「お前にとってのそういう存在になれただけで充分だったんだけどな」



圭太がはーーーーっと大きくため息をつく。