「ていうか、なんで弘也の居場所を教えてやらなかったんだよ」


「考えてみてよ。今、唄子ちゃんに居場所を教えてあげたら、行きたいって言うに決まってるじゃん」


「そうだろうな」


「それで唄子ちゃんを引き連れてたまり場に行ったら、さらに騒がしくなって大変なことになるでしょ?そんなことになったら、たかやんの長い長い説教タイムが始まっちゃうよ?それでもいいの?」


「それは嫌だ!!」


「でしょ?だから教えなかったの」




教えちゃ、いけない気がした。


私の相棒の直感くんが、居場所を打ち明けることにストップをかけたんだ。



唄子ちゃんと大宮ツインズの相性は、おそらく最悪にさらに最悪を加えても足りないくらい、超超超最悪なんだろう。


それなのに、相容れてない不適合な奴らを引き合わせてしまったら、厄介なことになるのは明らかだ。



弘也とたかやんが、苦しげな表情をすることも。




だから、答えなかった。

……答えたくなかった。



弘也は洋館に居る、と教えてしまったあとで、面倒ごとに巻き込まれたら嫌だもん。




「それじゃあ、交番に行って、さっさと帰りますか」


「パトロール、まだ終わってねぇぞ」


「えぇー、もう終わりでいいじゃん」


「ダメだ!」


「ケチ。そんなんだから背が伸びないんだよ」


「身長関係ねぇだろうが!」




夜空に浮かぶ月の明かりが、ひどく柔らかくて。


私の鼓動を、ゆるやかに刺激した。