唄子ちゃんは一礼して、「ありがとうございました」と礼儀正しく感謝の気持ちを伝えてくれた。


頭を上げた唄子ちゃんの、私を見つめるまん丸な瞳が、いやに凍てついていたように感じた。



今のは、何?

気のせいなんかじゃない。


確かに、感じた。



唄子ちゃんの、冷え切った眼差しを。


あれは、他の誰でもない、私に対するものだった。




「う、唄子ちゃん、またね」


「さようなら、幸珀先輩」



別れを告げて家へと帰っていった唄子ちゃんに、手を振ることはできなかった。


さらりとなびく唄子ちゃんの金髪に反応して、心臓がやけに忙しなく動いていた。





「おい、いつまで踏んでんだ!?」


「あっ、ごめん。忘れてた」


「忘れてた!?ひどすぎだろっ」


「ごめんてば」




唄子ちゃんに気を取られて、頭からすっぽり抜けてたよ。


すぐにどかす予定だったんだけど、ずっと桃太郎のつま先に全体重のっけてグリグリしてた。てへっ。