BAD & BAD【Ⅱ】







「――あたしに触らないでっ」




噴き出しかけた私の耳に、いやにクリアに届いた、聞き覚えのある声。



この声……。

あそこの路地からだ。


私だけでなく、隣の桃太郎も、近くの細い路地を捉えていた。




「桃太郎も聞こえたの?」


「お前もか」


「耳だけはいいんだね」


「だけはってなんだよ、だけはって」




私と桃太郎は目を合わせて、軽く顔を縦に振ったのを合図に、どちらともなく近くの路地へ駆けていった。



何も起こらないのが1番なのに、どうしてこうも、繁華街はトラブルが発生しやすいんだろう。永遠の謎だ。


少しは真面目に生きたらどう?



悪い子な私が言えたことじゃないけど。




「俺達と一緒に遊ぼうぜ?」


「嫌だって言ってるでしょ?」


「つれねぇなー。楽しませてやれる自信あんのに」



薄暗さに塗れた路地では、1人の女の子が不良2人にナンパされていた。