きっと、他の恋人と比べたら、距離がある方なんだろう。
それでも、私達にとっては、この距離がちょうどいい。
名前を呼んだら駆けつけられて、手を伸ばしたら届いて、想いを囁いたら聞こえる。
そんな、近すぎず遠すぎない距離。
そばにいたいし、そばにいてほしいとも思うけれど、私達は恋人である以前に仲間だ。
距離が近すぎてしまったら、凛を1番に考えて、凛以外見えなくなってしまう。
それじゃあダメだ。
私には、守りたい仲間がいる。それは凛だけじゃないし、凛も私と同じだ。
だから、師匠の言う“恋人らしさ”は、私と凛の関係性の形には必要のないものなんだ。
……と、長々と語るのはとても恥ずかしい上に疲れるので、やめておこう。
もっと簡潔に、一瞬で伝わる方法ないかな。
あー、なんだか面倒になってきた。弁解せずに放置しておこうかな。
恋バナしたい気分じゃないし。皆がどう思っていようとどうでもいいしね。うん、それがいい。そうしよう。
ヤケクソになって自己完結した、直後。
背後から回された凛の大きな手が、強引に私の顔を横に向かせた。
びっくりする間もなく、ずっと黙っていた凛が私に近づいて。
チュッ。
リップ音を立てながら、私の唇を奪った。



