私は、唄子ちゃんの誠心誠意の気持ちごと、手紙を受け取った。
今日は郵便係を務めるよ。
配達はお任せあれ。
「それじゃあ、あたしはこれで」
「もう行っちゃうの?」
「はい。ここは、ひろちゃんやたかちゃん、十蔵寺くんや幸珀先輩にとっても、大事な場所ですから。いわば、聖域です。あたしなんかが踏み入れていい場所じゃありません」
それをわかってて、聖域の手前まで、勇気を出して来たんだね。
「そっか。気をつけて帰ってね」
「はい。幸珀先輩、さようなら」
「バイバイ、唄子ちゃん」
清々しい笑顔は、やっぱり完璧で。
去って行く後ろ姿は、本物のお姫様さながら、美しくきらめいていた。
私は手紙を持って、洋館の中に入った。
「皆大好き幸珀ちゃんの登場だぞっ」
……ホールがガランとしているのは、もはやお決まりです。
知ってた、知ってたよ。
どうせ皆、広間にいるんでしょ。
知っててやったバカは私ですが何か?



