余計な時間を使ったせいで、予定より遅れて洋館に到着した。
洋館の前では、なぜか唄子ちゃんがうろうろしていた。
「唄子ちゃん?」
ついにこんなところにまで来てしまったか。とんだつわものだ。
「何してるの?」
「あっ、幸珀先輩!」
私に気づいて駆け寄ってきた唄子ちゃんの手には、1通の手紙が。
ハッ、もしや剛へのラブレター!?
「あの、これ、ひろちゃんとたかちゃんに渡してくれませんか?」
「弘也とたかやんに?剛宛のラブレターじゃないの?」
「ちっ、違いますよ!!」
「なんだ、違うのか」
赤面する天使、うん、尊い。
後輩が可愛すぎてどうしよう。困った。
「ひろちゃんとたかちゃんに、まだちゃんと謝っていなかったので、会えなくなる前に散々迷惑かけたことだけでもお詫びしたくて」
「でも、2人のことだから、読む前に破って捨てちゃうかもよ?」
「それも覚悟の上です。読まれないとしても、渡したいんです」
変わったのは、善兄だけじゃなかった。
唄子ちゃんも、幸せを掴むために、変わろうとしている。
それが、すごく、嬉しい。



