ほら。
いい方向に、変わってる。
もし本当に善兄が成長しても、こっち側の味方にはできないけれど。
敵ではなくなるなら、この恐怖心もなくなるのだろうか。
「用はそれだけ?じゃあ行くね。さよなら」
「あ、待って!」
塩対応で背を向けたら、呼び止められた。
「真修くんに『辛い思いさせてごめん』って、伝えてくれる?」
「仕方ないなあ」
「ついでに、朔にも『卒業おめでとう』って僕の分まで祝ってあげて」
「はいはい、わかったわかった」
弟がついでって。それでいいのか、義理の兄よ。
まあ、いいや。今頃感満載なメッセージを、届けてあげよう。最後の手向けとして。
「またね幸珀」
私は何も返さずに、歩き出す。
足取りはやけに軽かった。



