「幸珀」
「はい?……って、あれ!?」
名前を呼ばれて横に顔を向ければ、隣にいたはずの師匠が凛にすり替わっていた。
師匠はどこ行った!?
キョロキョロ見渡すと、師匠はいつの間にか、前を歩く朔と真修の方に移動していた。
「手ぇ大丈夫か?」
「大丈夫だよ!ほらっ」
「……大丈夫じゃねぇじゃねぇか」
特に血の量が多い左手を見せたら、凛は顔を青くして、持っていたハンカチを左手に巻いて応急処置してくれた。
ハンカチはすぐに赤く染まっていった。
「右手は?」
「こっちも大丈夫!」
「そっちも傷だらけじゃねぇか」
「こんなのかすり傷だよ」
左手よりは傷が浅かったから、もう血は止まってる。
私が平気そうにしていても、凛の表情は陰ったままだった。
「すぐ治るって」
「でも……」



