「行こう、皆」
もうここに用はない。
砦は崩され、自由が返ってきた。
手をできるだけ使いたくないので、足で近くの扉をスライドさせると、遠くに古びた校門が見えた。
ステージの上で動けなくなってる真修に朔が肩を貸し、座り込んでいた凛に師匠が手を差し伸べ、皆と一緒に扉を通って外へ出る。
善兄1人を体育館に置き去りにして、扉をバタンと閉めた。
「いいの?あの人を置いてきちゃって」
「いいんですよ」
良心の塊でできてる師匠に、冷たく返す。
私に、善兄を慰めたり仲良しこよししたりする義理はない。
嫌いな人を助けるような趣味はないんだ。
それに、善兄は弱くない。
私が何かしなくたって、善兄はあそこから一人で出れる。
振り返りはしない。引き戻しもしない。心配もしない。
私は愛憎を背負いながら、前だけを見据えて進んでいく。



