こんなに心をかき乱されて、たくさんの辛い傷跡を残されて、仲間を甚振られて。
許される、はずがない。
被害者である私は、善兄のした最低な行為を、永遠に忘れちゃいけないんだ。
「一生……?」
「うん、一生」
頷いて、凛々しくも冷ややかに微笑んだ。
欲しくもない歪な情愛をくれた善兄に、同じ想いの代わりに同じ分だけの“悪”をあげる。
まるで「愛憎」の「愛」を善兄が、「憎」を私が半分ずつ持ってるように。
それしかできないけれど、そのくらいならできるから。
「それで、我慢してくれない?」
意義は違うかもしれない。
それでも、今まで善兄が捧げようとしてくれた永遠と、価値は一緒。
私の一生分の憎悪を、どうかもらってよ。
「……う、ん」
ぎこちなく返事した善兄の頬に、透明な涙が伝う。
初めて見た涙に、昔の善兄の面影を感じた。



