「私は善兄の本当の家族に……善兄のものには、絶対になれない」
善兄が注いだ愛に、同じ想いを返すことはできない。
善兄の家族への願望を、叶える相手は私じゃない。
多分、昔の優しい善兄だったとしても、答えは変わらなかっただろう。
私には好きな人がいて、それは善兄じゃない。
私にとって、善兄は、大嫌いな人以外の何者でもない。そう、なってしまったんだ。
「何度閉じ込められたって、絶対に逃げ延びる」
「そしたら、また、捕まえるよ」
「そしたら、私もまた逃げる。善兄の鎖にずっと縛られてることはないよ」
無理して繕われた破顔は、傷を負ってもなお、残忍なくらい綺麗だった。
善兄の服に、手のひらの赤が染み込む。
どれだけアピールされて、いいところを教えられても、私の想いは揺らがない。
繰り返しても、善兄は救われない。
きっと、私は生涯、束縛が苦手なままだ。



