BAD & BAD【Ⅱ】





転倒こそしなかったものの、ようやく善兄にちゃんとしたダメージを与えられた。


善兄は若干咳き込みながら、チラリと私を一見する。



「相変わらず、幸珀はすごいね」



同じ手に二度騙されるほど、善兄は阿呆じゃない。



もう、だるまさんがころんだ戦法は効かない。


一瞬の隙を突けただけ、ラッキーだった。



「幸珀の発想力には、毎回驚かせるよ」


「よそ見してんじゃねぇぞ!」



ゆるく微笑む善兄に、朔が勢いに乗って突撃していった。


師匠と凛も、防御から攻めに転換し、善兄を挟み撃ちする。




しかし、善兄がたった一撃で弱まるわけがなく、私に近づくなとでも脅すように、ナイフを振り回した。



善兄のテリトリーに中途半端に踏み入れれば、首が飛ぶ。

それを知っていて、3人はなかなか善兄との距離を詰められなかった。



……そう、善兄はずっと、3人を殺そうとしながら、誰もステージに上がらせないよう計算して闘っていたのだ。




そのため、善兄を倒さなければ、私を助けられない。


つまり、監禁は終わらない。



まあ、この鎖が外れてしまえば善兄の計算も意味を失くすんだけど、そう簡単に外せたら苦労はしない。