このままじゃ、束縛を解く前に、皆が善兄に殺されてしまう。
そんなの嫌だ!
何か、この場でできることはないの?
一瞬だけでいい。
皆に攻撃のチャンスを、緊迫を破る一手を、もたらしたい。
私も、皆の力になりたいんだ。
思考回路を巡らせて考えている間に、ナイフの刃が密やかに、師匠の首元に近づいていた。
何か、何か、何か……!
何か、ないの!?
不意に脳裏に回想された、神雷は良い子の集まりだよ大作戦の会議をする前の、神雷での愉快な光景。
あっ、そうだ、アレだ。イチかバチか、やってみよう!
カラッカラな口を開いて、空気を吸い込む。
「だるまさんがころんだっ!!」
突拍子もない大声に、この場にいる全員が反射的にピタッと停止した。
よかった、効いたみたい!
ハッとして、いち早く行動を起こしたのは、朔。
善兄の腹に、渾身の力を込めた蹴りを一発食らわせた。



