BAD & BAD【Ⅱ】





このままじゃ、束縛を解く前に、皆が善兄に殺されてしまう。


そんなの嫌だ!



何か、この場でできることはないの?



一瞬だけでいい。


皆に攻撃のチャンスを、緊迫を破る一手を、もたらしたい。


私も、皆の力になりたいんだ。




思考回路を巡らせて考えている間に、ナイフの刃が密やかに、師匠の首元に近づいていた。



何か、何か、何か……!

何か、ないの!?




不意に脳裏に回想された、神雷は良い子の集まりだよ大作戦の会議をする前の、神雷での愉快な光景。


あっ、そうだ、アレだ。イチかバチか、やってみよう!



カラッカラな口を開いて、空気を吸い込む。




「だるまさんがころんだっ!!」




突拍子もない大声に、この場にいる全員が反射的にピタッと停止した。


よかった、効いたみたい!



ハッとして、いち早く行動を起こしたのは、朔。


善兄の腹に、渾身の力を込めた蹴りを一発食らわせた。