BAD & BAD【Ⅱ】





どこからか吹き込んだ寒々しい微風が、善兄と3人の間を縫っていく。



善兄を纏うオーラの質が、あまりに美しく、淡白で、残酷で。


3人は息を呑み、恐れた自分を戒めた。



鎖がぐらついた、些細な音がクリアに響く。




「殺られる準備は、いい?」




おもむろに一歩前に出た善兄に、誰もが目を奪われた。



刹那、ナイフがビュッ、と風を巻き起こしながら、朔を横切った。


朔は鋭敏な感覚で退いたが、うまくかわしきれず、ナイフの先端に右腕を傷つけられた。



「あ、っぶねぇ……っ」



何、今の速さ。


血の気が引いていく。

震える唇を、強く噛んだ。



息をつく暇もなく、善兄は獲物を狙う狩人さながら攻め続ける。



「うおっ」


「っ……!」



今度は師匠に向けられたかと思ったナイフが、いつの間にか凛の正面に突き出されていた。