どこからか吹き込んだ寒々しい微風が、善兄と3人の間を縫っていく。
善兄を纏うオーラの質が、あまりに美しく、淡白で、残酷で。
3人は息を呑み、恐れた自分を戒めた。
鎖がぐらついた、些細な音がクリアに響く。
「殺られる準備は、いい?」
おもむろに一歩前に出た善兄に、誰もが目を奪われた。
刹那、ナイフがビュッ、と風を巻き起こしながら、朔を横切った。
朔は鋭敏な感覚で退いたが、うまくかわしきれず、ナイフの先端に右腕を傷つけられた。
「あ、っぶねぇ……っ」
何、今の速さ。
血の気が引いていく。
震える唇を、強く噛んだ。
息をつく暇もなく、善兄は獲物を狙う狩人さながら攻め続ける。
「うおっ」
「っ……!」
今度は師匠に向けられたかと思ったナイフが、いつの間にか凛の正面に突き出されていた。



