BAD & BAD【Ⅱ】





「……懲りないなあ」




ざわり、と鳥肌が立つ。


鎖を外そうとしている手を一旦止めて、皆の方を見据える。



危ない。逃げて。



その声が喉を通る前に、善兄の狂気じみた執着が、闘争心を目醒めさせてしまった。


瞬時に朔の肘を受け止め、凛のかかと落としを避けながら、師匠が足を振り上げる前に、師匠の腹に肘鉄を食らわせた。



「グホッ……!」



一時離脱した師匠に気を取られた朔のみぞおちに、善兄の空いている方の拳が深くねじ込まれる。


最後に、凛の足が地に着く間際に、顔の横を狙って蹴りを入れた。




鮮やかなほど軽快にきまった、わずか数秒の流れ技。


遊びをやめた善兄は、これほどまでに最凶だということを、痛感させられた。




「これであきらめついた?」


「っ……、まだ、だ」



1番に答えたのは、意外にも、1番最後にやられた凛だった。


凛に同意するように、師匠と凛も痛みをこらえながら立ち上がる。