「……懲りないなあ」
ざわり、と鳥肌が立つ。
鎖を外そうとしている手を一旦止めて、皆の方を見据える。
危ない。逃げて。
その声が喉を通る前に、善兄の狂気じみた執着が、闘争心を目醒めさせてしまった。
瞬時に朔の肘を受け止め、凛のかかと落としを避けながら、師匠が足を振り上げる前に、師匠の腹に肘鉄を食らわせた。
「グホッ……!」
一時離脱した師匠に気を取られた朔のみぞおちに、善兄の空いている方の拳が深くねじ込まれる。
最後に、凛の足が地に着く間際に、顔の横を狙って蹴りを入れた。
鮮やかなほど軽快にきまった、わずか数秒の流れ技。
遊びをやめた善兄は、これほどまでに最凶だということを、痛感させられた。
「これであきらめついた?」
「っ……、まだ、だ」
1番に答えたのは、意外にも、1番最後にやられた凛だった。
凛に同意するように、師匠と凛も痛みをこらえながら立ち上がる。



