そんな2人を見逃すような甘さを、善兄が持ち合わせているはずがなく、師匠の後ろに回って背中を軽く押した。
師匠は前方によろめいて、近くにいた凛共々床に倒れてしまう。
その間に背後から突進してきていた朔の気配も、当然察知していて、朔の横に素早く移動し、襟を後ろに引っ張り転ばせた。
「この程度の実力で、よく僕に挑めたね」
善兄が、朔の腹に片足を乗っけて挑発する。
堅固で、アグレッシブで、淡々とした善兄の戦闘スタイル。
……いや、これは、果たして“闘っている”のだろうか。
余裕綽々たる闘いぶりは、まるで蔑みながら戯れているよう。
「どう?後悔、した?」
「っざけんなよ!」
朔は自分の上に乗っかっている足を押し返し、起き上がってすぐ前のめりに進撃する。
目眩が消えた師匠と凛も、再び襲いかかる。
「後悔?んなの、してるわけねぇだろうが!」
朔のエルボー、師匠の回し蹴り、凛のかかと落とし。
3方向からの同時攻撃が迫る中、善兄は一歩も動こうとはしなかった。



