BAD & BAD【Ⅱ】





そんな2人を見逃すような甘さを、善兄が持ち合わせているはずがなく、師匠の後ろに回って背中を軽く押した。


師匠は前方によろめいて、近くにいた凛共々床に倒れてしまう。



その間に背後から突進してきていた朔の気配も、当然察知していて、朔の横に素早く移動し、襟を後ろに引っ張り転ばせた。



「この程度の実力で、よく僕に挑めたね」



善兄が、朔の腹に片足を乗っけて挑発する。




堅固で、アグレッシブで、淡々とした善兄の戦闘スタイル。



……いや、これは、果たして“闘っている”のだろうか。


余裕綽々たる闘いぶりは、まるで蔑みながら戯れているよう。




「どう?後悔、した?」


「っざけんなよ!」



朔は自分の上に乗っかっている足を押し返し、起き上がってすぐ前のめりに進撃する。


目眩が消えた師匠と凛も、再び襲いかかる。



「後悔?んなの、してるわけねぇだろうが!」



朔のエルボー、師匠の回し蹴り、凛のかかと落とし。


3方向からの同時攻撃が迫る中、善兄は一歩も動こうとはしなかった。