畳の近くにあるローテーブルの上に置かれてある、あのカップに気づかなくて。
気づいていたら、蜂を狙うコースを変えていた。
なんて言ったって、今の真修には通用しないのは明白だ。
「ご、ごめん、真修。ちゃんと弁しょ……」
「あれ、高かったのに!」
「……弁償する代わりに、私にできることはなんでもするから」
「それならまず、あのカップの残骸を片付けて」
「了解であります」
絶賛立腹中の真修に敬礼してから、割れたカップの破片を回収し始めた。
床が紅茶でびちゃびちゃだ。あとで拭かなくちゃ。
カップが畳の上に落ちなくてよかった。
「うわ、グロ~」
さっきまでパニクっていた弘也が、蜂の死骸をチラ見しながら顔を歪めた。
死んだ虫も怖いなら見なきゃいいのに。
「わざわざ殺さなくても、窓開けて追い出せばよかったじゃねぇか」
「あっ、清掃隊長!」
「いつまでその呼び方続けるんだよ」
「んー、ずっと?」
「やめろ」



