桃太郎の問いかけには答えず、スリッパを持つ手を振り上げた。
「必殺、スリッパ殺し!!」
思いつきの必殺技名を発しながら、スリッパを槍のように勢いよく投げ放った。
スリッパは、風を裂きながら目にも止まらぬ速さで、蜂との距離を詰めていく。
そして、スリッパの先端が蜂を仕留め、そのまま壁にぶち当たった。
壁に突き刺さったスリッパの先には、息絶えた蜂が射止めてある。
「おお!幸珀、すごいねっ」
「えへへ、どうもどうも」
師匠達に喝采を送られて、調子に乗りながら鼻のてっぺんをこすった。
それほどでも~。
私の実力ならこのくらい楽勝よ!
「だけど、カップまで壊すことないじゃんか!」
「うっ。ま、真修……」
そう、私が投げたスリッパは、
蜂だけでなく、凛が先程まで飲んでいたと思しき、紅茶の入ったティーカップも道連れにしてしまったのだ。



