BAD & BAD【Ⅱ】





桃太郎の問いかけには答えず、スリッパを持つ手を振り上げた。



「必殺、スリッパ殺し!!」



思いつきの必殺技名を発しながら、スリッパを槍のように勢いよく投げ放った。



スリッパは、風を裂きながら目にも止まらぬ速さで、蜂との距離を詰めていく。


そして、スリッパの先端が蜂を仕留め、そのまま壁にぶち当たった。



壁に突き刺さったスリッパの先には、息絶えた蜂が射止めてある。



「おお!幸珀、すごいねっ」


「えへへ、どうもどうも」



師匠達に喝采を送られて、調子に乗りながら鼻のてっぺんをこすった。


それほどでも~。

私の実力ならこのくらい楽勝よ!




「だけど、カップまで壊すことないじゃんか!」


「うっ。ま、真修……」



そう、私が投げたスリッパは、

蜂だけでなく、凛が先程まで飲んでいたと思しき、紅茶の入ったティーカップも道連れにしてしまったのだ。