「俺、それがすごく嫌で、幸珀を侮辱するなって怒鳴りたかった」
かっこいいね、真修は。
朔なんか、学年が違ったからか、“あの日”の出来事を後日噂で知ったって言ってたのに。
「幸珀を助けたかった。幸珀の味方になってあげなくちゃって、思った」
「ありがとう、その気持ちだけで十分だよ」
真修は首を横にふるふる振って、お礼を拒んだ。
「ありがとうだなんて、言わないで」
「なんで?」
「……だって、実際は思っただけで、幸珀を助けられなかった」
拘束された腕が、しびれる。
これだから、束縛は嫌いなんだ。
真修を支えてあげたいのに、近くに行けない。
「勇気がなくて、逃げちゃったんだ」
顔を上げた真修と、目が合う。
不細工に持ち上げられた口角が、ごめんね、とかすかに動く。
真修の感情をそのまんま表しているようだった。



