BAD & BAD【Ⅱ】





灰色の瞳が、ゆらり、泳ぐ。




――境界線は、感じない。



そうだよ。一度だって、真修との間に線が引かれたり、壁を隔てられたりしたことはなかった。


それってつまり、真修が私に対して、一度も心を閉ざしたことがないってことでしょ?




真修が隠したいなら、聞かない。


自分から話そうとするまで、知らなくていい。



でも、違う。

隠そうとなんて、していない。


きっと、真修も感じてた。




ぶつけてよ、真修の全てを。




「ねぇ、どうして?」


「……ずっと、」



喉の奥から絞り出された声は、あまりにも儚く、ほんの少し力を加えたらぽっきり折れてしまいそうだ。


なぜか、アールグレイの香りが、鼻をかすめた。



「ずっと、話したかった。謝りたかった。だけど、善さんに逆らうのが怖くて、話せなかった」



真修は俯き、視界から私を外す。