灰色の瞳が、ゆらり、泳ぐ。
――境界線は、感じない。
そうだよ。一度だって、真修との間に線が引かれたり、壁を隔てられたりしたことはなかった。
それってつまり、真修が私に対して、一度も心を閉ざしたことがないってことでしょ?
真修が隠したいなら、聞かない。
自分から話そうとするまで、知らなくていい。
でも、違う。
隠そうとなんて、していない。
きっと、真修も感じてた。
ぶつけてよ、真修の全てを。
「ねぇ、どうして?」
「……ずっと、」
喉の奥から絞り出された声は、あまりにも儚く、ほんの少し力を加えたらぽっきり折れてしまいそうだ。
なぜか、アールグレイの香りが、鼻をかすめた。
「ずっと、話したかった。謝りたかった。だけど、善さんに逆らうのが怖くて、話せなかった」
真修は俯き、視界から私を外す。



