「幸珀に、僕の全てを捧げるよ」
顎を、クイッと持ち上げられた。
善兄の全てをもらったって、即返却かゴミ箱行きのどちらかだ。
「だから、ねぇ、幸珀」
無駄に整った顔が、近づけられる。
吐息がかかって、気色悪い。
「永遠に僕のものになってよ」
「嫌だ!」
食い気味に反対すれば、善兄が妖艶に含み笑いする。
「断っても、無駄だよ」
心臓の音が、うるさい。
平静を保つのは、大変だ。
気を抜けば、善兄の威圧的なオーラに侵食されて、恐怖心が声帯を殺してしまう。
「幸珀がここに鎖で繋がれている限り、幸珀は僕のものだ」
違うよ。私は、他の誰でもない、私のものだ。
変な思い込みはやめて。