BAD & BAD【Ⅱ】






自分の直感を頼りに、一生懸命駆けていく。



手首についた束縛の痕も、善兄に囁かれた憧れも、共有してしまった秘密も。

思い出したくなくてもどうしても過って、私を追い詰める。



傷をえぐられているみたいで、激痛が絶えない。




愛って、こんなに残酷なものだったっけ?


神様を恨みたくなるほど、苦しい。





意識が朦朧としてきた。



どのくらい走ってきたのか、定かではない。


気分的には10キロだけど、実際は1キロも走ってないんだろうな。



体力が尽きかけてきた、その時だった。



『幸珀……?』



前方から、私を呼ぶ声がしたのは。



この声は、もしかして……。


すぐさま、少し遠くにいる人影に目を凝らしてみた。



あぁ、やっぱり。



『お前、どこ行ってたんだよ!探したんだぞ!』



うつろな瞳で捉えた、見知った姿。


ようやく、肩の荷が下りた気がした。