自分の直感を頼りに、一生懸命駆けていく。
手首についた束縛の痕も、善兄に囁かれた憧れも、共有してしまった秘密も。
思い出したくなくてもどうしても過って、私を追い詰める。
傷をえぐられているみたいで、激痛が絶えない。
愛って、こんなに残酷なものだったっけ?
神様を恨みたくなるほど、苦しい。
意識が朦朧としてきた。
どのくらい走ってきたのか、定かではない。
気分的には10キロだけど、実際は1キロも走ってないんだろうな。
体力が尽きかけてきた、その時だった。
『幸珀……?』
前方から、私を呼ぶ声がしたのは。
この声は、もしかして……。
すぐさま、少し遠くにいる人影に目を凝らしてみた。
あぁ、やっぱり。
『お前、どこ行ってたんだよ!探したんだぞ!』
うつろな瞳で捉えた、見知った姿。
ようやく、肩の荷が下りた気がした。



