恐怖は萎れるどころか、膨れ上がっていた。
頭の内側を鉄パイプでガンガン殴りられている感覚に襲われる。
怖いし、痛いし、もう嫌だ。
今日は、最低最悪な一日だ。
ここ、どこなんだろう。
南側はあまり来たことがないから、現在地も、どうすれば家に帰れるのかもわからない。
不安で、心拍数が上がっていく。
『はぁ、はぁ、はぁ……』
息が、続かない。
疲れてきて、足が重くなる。
走る速さが、どんどん遅くなっていった。
『動け、このポンコツ!』
拳で太ももを叩こうとして、気づく。
声も手も足も、廃校を出てからもずっと震えていたことに。
『根性ないんじゃないか?私』
体が重いままでいい。震えたままでいい。
今はただ、走れ。
悔しさと恐ろしさを糧に。



