窓の破片が、キラキラ輝く。
宙に飛び出た私の体が、落下していく。
地面を見据えながら、空中で体勢を整えた。
『……っ、ふぅ』
軽やかに、とはいかなかったが、無事に着地できた。
足がじーんとする。でも、どこも怪我はしていない。
服についた破片を払いながら上を見上げたら、善兄が割れた窓から顔を出していた。
2階、だったんだ。案外低くて助かった。
私は善兄を指差して、叫んだ。
『善兄のことなんか、大嫌いっ!』
最後にベーッと舌を出して、一目散に逃げ出した。
背を向けた私に、善兄がどんな表情をしていたのか、私には知る由もない。
私は急いで廃校の敷地内を出て、無我夢中に走っていた。
夕闇の中、背後を気にしながら、ひたすら足を動かす。
善兄が追ってきたらどうしよう。
追いつかれたらどうしよう。
まるで、終わらない悪夢が、繰り広げられているようだった。



